「検索」が世界を変える。

あなたのケータイの検索画面には何がレコメンド(推薦)されていますか?

私が過去に何を検索し、どんな記事をクリックし、何を購入したか。そうした履歴にもとづいて、私の興味をひきそうな情報をコンピューターが自動でピックアップし、ケータイの画面いっぱいに広げています。

ケータイは私たちの求めるものをくまなくリサーチし、使えば使うほど、ユーザーに最適化された欲しい情報ばかりを画面に溢れさせます。

この「欲しい情報」は、好きなものばかりではありません。人は好きなものと同様に、嫌いなものにも無関心ではいられないからです。

むしろ積極的に嫌いなものの情報を収集するのが人の常です。「嫌いなもの」を「嫌いな人」に置き換えると、誰にだって心当たりの一つや二つはあるはずです。僕もそうです。

反面、興味のない情報はそもそも目に入ることすらなくなります。「愛の反対は憎しみではなく、無関心です」というマザー・テレサの言葉を思い出します。

さて、そうして出来上がったケータイ電話の画面には、いったいどんな世界が広がっているでしょうか。

それはきっと居心地のいい世界。あなたに最適化された世界。ケータイの画面は、私たちの「心の鏡」かもしれません。

でもそれは ───ものごとの「真実」とは限りません。

意図して“出力”を変える。
そして “履歴” を構築する。

実は私たちのリアル(現実)もネットと似た世界です。

たとえば、人は人を好きになると、その人の魅力に目を奪われます。「アバタもエクボ」です。反対に、嫌いな人のすることは、いちいち癇(かん)に障ります。「あら探し」です。

そうして人は本人も知らないうちに、好きな人の良い情報を、嫌いな人の悪い情報を、一生懸命「検索」し「クリック」しています。私たちの入力(感情)が、それにふさわしい現実を次々と引き寄せ、膨らませます。

こうして現実も私たちの「心の鏡」となっていきます。

それは一面、「私の心象を反映した世界」かもしれません。でもそれが「そうでしかありえない世界」とは限りません。

もしあなたが、現状(心の鏡)を気に入らないのなら、おすすめのシンプルな方法があります。それは、「幸せなワード」をあなたの心の検索画面に入力すること。

ありがとう、嬉しい、楽しい、幸せ、美味しい・・・

そうした他人やあなた自身が聞いて嬉しいワード(言葉)を入力(発声)することです。

もしくは、「こうありたい」という自己イメージにひきつけて、自分が話す言葉や内容を変えていく。

初めは、いままでの履歴が邪魔して、世界の変化を感じられないかもしれません。

でも、大丈夫。ケータイ同様、心ももらすことなくあなたの検索を記憶します。

そうして日々の小さな言葉や感情の積み重ねが、目に見えない膨大な「履歴」となって、あなたの心に映る世界を刻々と微修正していきます。

その積み重ねはゆっくりと、しかし確実に、あなたの世界を良い方へ導いてくれます。

スマホのレコメンドに埋め尽くされる人

文:可児義孝 絵:たづこ

tabinegoto#05

Follow me!